平成29年度 里山整備・ものづくり講座(第6回)
2018年2月10日(土)9:00~ 第6回 まとめ・キノコの植菌作業
全6回のこの講座も今日が最終回です。今日はまとめと、一昨年から恒例化を図っているキノコの植菌作業ですまとめでは、沢山池の里山の散策から大楠山山頂まで歩いたりと、活動エリアの踏破をしていたのですが、本日は皆様用事があったりインフルエンザにかかったり・・・と様々な事情があり、講習生の参加者は3名のみですというわけで、まとめはひとまず置いておくことにし、本講座の第3回で作った自然柵の残りをつくってしまいます
写真上では3名以上いるように見えますが、指導者である森林インストラクターの方と、過去の講習会の修了生です田んぼづくり講習会とこの里山整備・ものづくり講座は、考え方や技術などを習う場であって、この講習が終わると、習った技術などを使って里山的環境の再生活動に本格的に参加していただく形になっていますつまり、本番は講習を受けた翌年度から、ということです。その一環として後輩にあたる講習生の指導にあたってもらうこともあります。もちろん参加は強制ではありませんのでご安心を
第3回の講座でつくった柵はまだまだ未完成です。柵は毎年の講座でつくるの?いえいえ、違います修了生がボランティアで整備してくれています。この講習に参加されて、ここ沢山池の里山が大好きになってしまった方々が里山的環境の再生に尽力してくれています
写真では左に川があり、右奥の方は歩いていけそうですが、梅雨時などは地面に見える右奥は池の底です立ち入ってみると、水がないにも関わらずぬかるんでおり、さらに奥に進むと沼状態になっています。大人でも泥に嵌まると足を抜くのに苦労しますが、これが目を離してしまった子どもだったらと思うと・・・柵は必要だなと思います可能な限りたくさんの場所で自然に触れ合ってほしいのですが、万が一の事故につながる可能性がある箇所はどうしてもそういうわけにはいきません
二手に分かれて作業開始です。
支柱はホームセンターで仕入れましたここまで真っ直ぐな木を数十本揃えるのは、里山整備という作業の中では至難の業です。普段切るのは、伸びすぎてしまった枝や落下する危険がありそうな箇所なので、支柱の材料になりそうなものを意図的に切っているわけではありません。
柵に張り巡らせる木は沢山池の里山で取った材を使っています木の張り巡らせ型のデザインも自分達で考えるので、頭と体をフル活用しないといい柵ができませんデザインというのは不思議なもので、十人十色とはよく言ったものです。同じデザインを考える人がいません。第3回でもいませんでした長い木を渡そうとする人もいれば、短い木をつなごうとする人、曲がった木ばかりを使う人などなど、多種多様です。
支柱から支柱までの幅をさらに超える木を渡そうと画策してる様子です。ちなみに、写真の一番左の方がこの柵をつくろうと思い立った修了生の方です週に3回以上はこの沢山池の里山に“出勤”してくれています
こちらは直線状の木を使って菱形を作りました。木と木を紐を使って結ぶことにしましたが、なるべくほどけにくい結び方である方が望ましいそこで、門松製作の講師でもあり、講習の修了生でもある阿部さんに結び方を教えてもらいました。男結び、と呼ばれる結び方ですが、ちょっと言葉では説明できません動画や本などで調べてみてください。ちなみに、こんなに間近で見ていた講習生でも、一度見ただけじゃ全く覚えられない、とお手上げの結び方でした
講習生3名しかいない中、なんと予定していた部分以上の箇所まで含めて完成です2回目ともなると作業の要領を得ているのか、早かったですね
昼食をとり、キノコの植菌に移ります
今回も去年同様シイタケの原木栽培をします
まずは榾木(ほだぎ:シイタケの菌を根付かせるための木)にドリルで穴を空けます。
深さは大体1.5cm前後といったところです。ここに菌の種駒を打ち込んでいきます。
このドングリのようなものが種駒です。これにシイタケの菌が入っています。
ところで、みなさんは「キノコ」が何者であるか知っていますか?キノコは植物の一種と思われがちですが、植物ではありませんキノコは一般的に菌が作り出す子実体(しじつたい)のことを指します。何のことと思われるかもしれませんが、説明すると大変長くなってしまうのと、キノコはまだまだ解明されていないことが多いので、詳細は割愛します子実体とは、菌類が胞子を飛ばすために作り出す構造物であると考えておいてくださいキノコは植物より動物に近い生きものであり、現在では学問上でも動物界、植物界とは異なる菌界という独立した生きものとして分類するようです。目に見えるキノコが実体ではなく、むしろ目には見えない菌としての部分が実体です意外かもしれませんが、キノコは草木花の仲間ではなく、カビの仲間です。いわゆる菌類と呼ばれるものですが、その働きは重要で、菌類がいるからこそ自然の中では動植物の死骸が分解されます。そして、カビの中でもアオカビは人類にとっても重要と言えます。肺炎球菌などの抗生物質(こうせいぶっしつ:厳密に言うと違いますが、医者が処方する薬と考えてください)であるペニシリンはアオカビから発見されました。ペニシリンとは何か?ぜひ調べてみてください今でも使用されている抗生物質です
榾木に空けた穴に種駒を打ち込んでいきます。
打ち込んだものがこちらです。今日打ち込んだものは早ければ1年後にシイタケが発生するでしょう去年、一昨年と栽培して実際に試食してみましたが、食感も味も市販のものよりよかったと記憶しています肉厚で味があるとでもいいましょうか、傘部分の厚みも違いました。
これを日陰で風通しのあまりよくないところに置いておきます。キノコは何となく暗くてじめじめしたところに生えるので、光を嫌うと思われがちですが、そんなことはありません。むしろ、キノコ達は光を求めて光のある方へと伸びていきます。スーパーでよく見かけるエノキダケってご存じですよね?正式には「エノキタケ」と言いますが。「~ダケ」と濁るのは竹の仲間であり、キノコの仲間は「~タケ」と呼ぶのが正式名称です濁音にはなりません。エノキタケは白くて細長いキノコとして売られていますが、あれは光を遮断した環境で育てているからあのような形になります。キノコも光がないともやしのようになってしまうんですねちなみに、光が当たったエノキタケは茶色がかった傘を広げ軸もしっかりとした、いわゆる「キノコ」の形をしています
半年後に写真のような井桁積みにしますが、今は平置きです。手前は去年のもので、今年の榾木は左奥にちょこっと見えるのがそれです
これで本日の作業は終了です。そして、今年の里山整備・ものづくり講座も修了です
約1年にわたり里山的環境の再生活動をお伝えしてきましたが、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?里山での再生、整備などの活動は講習が終わったから終わりになるわけではありません。この先も人と自然が隣接する限り半永久的に続く活動です。今いる方々の次の人、またその次の人へと活動を継承していく必要があります。人にとっても生きものにとってもよい環境になるようこれからも活動を続けていきますこれを読んでくれたあなたも少なからず自然に興味があると思いますので、“次の人”になってみませんか?興味のある方のご参加をお待ちしています。
それではまた来年度お会いしましょう