平成29年度 自然観察会「春を探しに自然の中へ」
2018年3月11日(日)9:00~ 沢山池の里山自然観察会
今日は3月11日。7年前の今日、東日本大震災という未曾有の大災害が起きました。自然災害に抗うことは難しいですが、自然環境に携わる者としては、万が一起きてしまった場合、できるだけ被害が少なくなるようにと願うばかりです
ところで、未曾有(みぞう)という言葉。どちらかと言えばマイナスな意味合いで使われることが多いですが、本来の意味は真逆です未曾有は訓読みすると「未(いま)だ曾(かつ)て有(あ)らず」となり、今までになかった、きわめて珍しい、などといった意味で、大変素晴らしいこと、めでたいことを表す言葉だそうです。大本はサンスクリット語というインドで今も使われている言語の一つであり、仏教用語であるようです
さて、今年の自然観察会では未曾有の発見などはあったでしょうか観察会は3コースに分かれているので、それぞれコースごとに紹介します
まずは「1 海、川、里山の自然体験」から
こちらは横須賀市民病院あたりにある斉田浜(せいたはま/せいたばま)から川をさかのぼり、沢山池の里山まで歩くコースです。
斉田浜はそれほど広い浜ではありませんが、砂浜、海岸線、岩場と海を表すアイコンがコンパクトにあり、さらに、人でごった返すこともほとんどないとてもよい浜です斉田浜では貝殻拾いをしますサクラガイという貝の貝殻が見つかればアタリですほかの貝殻はハズレです。冗談ですサクラガイの貝殻が中々見つからないレアな貝殻という意味です。
それでは出発です
川は山に降った雨や湧き出る地下水などが高い位置から低い位置に流れてくることでできるものです。最終的に行き着く先は海です川と海の境界線あたりってどうなっているんでしょう?横須賀は平作川の河口が東京湾とぶつかっています。護岸工事がなされているので、河口付近に降りることはできませんが、どのあたりから水がしょっぱくなるのか興味があります
沢山池の里山入口から出て、道路を渡った先にこのような広場があります。通称で親水広場と呼ばれています。川岸あたりがギザギザとしていますが、これは環境に配慮した護岸工事というものです。魚などの生きものが卵を産んだり、その他様々な生きものの住処になったりします。川は人を含む全ての生きものにとって重要なものです氾濫を防ぐために行う護岸工事は人の生活のために行われますが、川ではたくさんの生きものがすでに生息していますので、生きもの達にとっても住みやすい環境に整備する必要があります。
荻野川をさかのぼって沢山池の里山に到着です子ども達が入っている川も荻野川です。同じ川でも周りの環境が違うと表情が変わって見えます市街地を流れる荻野川は護岸工事がなされていることもあり、整然とした表情を見せますが、沢山池に流れる荻野川は整備されておらず、流れも自然のままなので無邪気な表情を見せます。川から沢山池に流れ込むあたりがややカーブをしているのですが、雨が降り水量が増すたびに川の流れが変わります。カーブした部分は大雨などで次々と川の水量が増したとき、水の勢いに負けてカーブ部分を取り残し、直線の川へと戻ります。多摩川などの大きな川では、このような動きをすると川の氾濫となり、大災害になってしまいます沢山池付近の荻野川の流れ程度では災害にはなりません。しかし、この小さな流れで川の成り立ちや氾濫をする過程が観察できることはとても貴重なことだと思います
荻野川に生息する生きものを観察しています。このあとは昼食をとり、関口牧場でアイスクリームを食べた後、解散です
続いては「2 カエルの産卵と野鳥観察」
こちらは沢山池の里山で見られる野鳥を観察し、また、田んぼにあるカエルの卵を観察したり触ってみたり、その他様々な里山の環境に触れるコースです。中々の好評をいただき今年は参加者が多く、2つのグループに分けて観察しました。
まずは今日のコースの説明です。
子ども達は目を凝らし、池の奥にある立柳の群生を見つめます沢山池では普段、カモ、アオサギ、トビ、カワセミが見れます。まれにオオタカ、ノスリも見ることができます。鳴き声ではアオジ、コゲラ、ウグイス、ガビチョウなどが生息していることがわかります。
こういう場所ではこういう鳥が見れます、という説明をしているところですちなみにウグイスですが、「ホーホケキョ」と鳴く鳥で、「ホーホケキョ」とキレイに鳴くために日々鳴き声の練習をしていると思っている方がおられるようですが、鳴き声は個体によって違いますホーホーホケッキヨと鳴く個体はホーホケキョとは鳴きません。ホーチヨチヨと鳴く個体もホーホケキョと鳴くようにはなりません。鳴き方を教わったらそのままの鳴き方で鳴く習性の鳥なので、全てのウグイスがホーホケキョと鳴くわけではないんですね。
さて、場所が変わってこちらは田んぼです。この田んぼはここ沢山池の里山で毎年開催している田んぼづくり講習会で活用している田んぼと同じ場所ですここに何があるかというと・・・
カエルの卵です時期的にはもう孵化してオタマジャクシになり始める頃ですが、卵もまだあります。初めて触るカエルの卵にドキドキ卵自体は透明のゼリーのようなものに包まれているので直接卵に触れることはできませんが、そのゼリー状のものを触ります。これはヤマアカガエルの卵です。産卵時期は2月から3月あたりにかけてが多いとのこと。というのも、その時期は蛇など卵を食べてしまう敵が冬眠しているので、ほかの時期に比べて食べられてしまう可能性が低いからだそうです全てのカエルが寒い時期に産むわけではなく、暖かい時期に産む種もいます。蛙の卵は産んでから2週間から長くても1か月程度で孵化するので、寒い時期に産んだからといって劇的に生存率が上がるわけではないようです
田んぼに入るのも初めてです。公園の砂とはまた違った感触で、ぐにょぐにょとした粘土をさらに柔らかくした感触です。
田んぼの横にある堆肥置場からはカブトムシの幼虫を今年も掘り出しました。毎年カブトムシの幼虫は丸まっているだけなのですが、今年の幼虫はサービス精神旺盛で、動いてくれましたカブトムシの幼虫は蛇や狸のエサになります。蛇などは大型の鳥のエサになります。こうした一連の流れを食物連鎖と言います、と講師が説明小型の生きものが減るとそれを捕食する大型の生きものも食べ物がなくなるので減る、すると今度は敵が減った小型の生きものが増える、そうするとエサが増えた大型の生きものが増える、といった具合にお互いに増減しながら個体数を保つのが食物連鎖です。ちなみに、人間はこの連鎖には入っていません。
自然と触れ合い、自然の良さを知る、そして自然の中にある問題に気付く、五感を使って体験し観察できるのがこのコースです。
それでは最後に「3 親子の自然遊び」です
このコースが今回最多の参加者数で、4つのグループに分けるほどの人数となりました内容は里山散策、川遊び、自然素材を使ったものづくりなどなど、盛りだくさんです
まずは周囲の散策からです。
山の中、川沿いの道など舗装されていない道を歩きます
こちらはロープを伝って斜面を登っています。この上は沢山池が一望できる景色よい場所になっています写真で見るより自分の目で見ることをおすすめしますので、写真はなしです
子ども達には初めにビンゴカードを配布してありますビンゴはここ沢山池の里山の中で見つける葉っぱの形などでうめていきます。たくさん発見できればできるほどビンゴになりやすいということです
こちらでは、木でメダルをつくっていますオリンピックで3位以上になると貰える首からぶら下げるメダルです。子ども達は思い思いの金メダルをつくっています
ブランコは木にロープをつるしただけの簡素なものです。川に入って魚を探す子、木登りする子、川に渡しただけで囲いのない橋を渡る子など、みんな思いっきり楽しんでいます普段ならやめなさいと怒られてしまうようなことも、自然の中では不思議とまあいいかと思えてしまいます自然は時に人に優しく、時に7年前のように厳しく接してきます。自然と触れ合い自然と遊ぶには、自然を知る必要があります。例えば、木にロープをつるしただけのブランコが、枝が折れて落ちたとします。現代だと、誰の責任なのか?管理はしっかりしていたのか?などといった議論になりがちですが、重要なのはそこでしょうかある程度の重さを加えると枝は折れるものだ、上から下にものが落ちるのは重力があるからだ、落ちた地面が土なら出血するようなケガはしにくいものだ、といったようなことを知り、そして体験できることの方が特に子どもにとって大事なことなのではないかな、と思います。もちろん、骨折するような大ケガや頭を強打するような事態は避けねばなりません。しかし、自然と触れ合うということは、ちょっとした危険と常に隣り合わせなのだという意識を持ち、その上で子ども達を自然の中で遊ばせているという認識が必要ではないでしょうか。そして、そこから学べることがたくさんあり、子ども達にとってプラスになるであろうということを知っておくことが大切なのではないかと思います
最後にインストラクターである榎本さんが絵本を読んでくれてこのコースはおしまいです
参加してくれたみなさんありがとございました参加してみたいと思ってくれたみなさん、来年お会いしましょう