里山自然観察会「春を探しに自然の中へ」


日時:2017年3月12日(日)9:30~

 

clover啓蟄や たゞ一疋の 青蛙clover

 原 石鼎(はら せきてい)の俳句です。啓蟄(けいちつ)とは、二十四節気の一つで、冬眠していた虫たちが地上へ出てくる時期のことですshineまさにこの時期を表す俳句ですねhappy01生きものにとっては長くつらい冬の時期が終わり、気候が暖かくなり始めた3月初旬に地上に出てくる。春の訪れを一匹の青蛙が出てきたことで表している、といったところでしょうかhappy01ちなみに、二十四節気の啓蟄とは中々耳慣れない言葉ですが、みなさんの中にはこの二十四節気の恩恵を受けている方もいます。二十四節気とは、1年を24に分ける中国の暦の表し方ですが、この中には夏至や冬至、立春などといったカレンダーで見たことがある言葉が出てきます。そして、その中に「春分」と「秋分」があります。春分の日、秋分の日は日本のカレンダーでは祝日ですねsign01知らず知らずのうちに、みなさんもこの二十四節気の恩恵を受けていたのですhappy02

 さて、この啓蟄の時期に沢山池の里山では自然観察会を開催しましたlovely今日はその様子をお伝えします。この里山自然観察会を始めた当時は参加者が中々集まらず、このイベント自体を知ってもらうことにとても苦労しましたcryingしかし、今や抽選となるほどの人気イベントになりましたsign03応募していただいたみなさんありがとうございますhappy01今回、残念ながら落選してしまった方、毎年開催していますので、またご応募お願いしますlovely

 今回も3つのコースがありますので、コースごとに紹介しますpaper

 

 まずは、「斉田浜から荻野川をさかのぼる」コースからsign01

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 こちらが歩くコースの全体地図です。この画像だとよく見えないよ、という方はこちらをご覧ください⇒斉田浜から荻野川をさかのぼる地図.pdf

 向かって左側が斉田浜、右上が沢山池です。市民病院前に集合し、斉田浜を周って、オレンジ色のラインで塗られているコースを歩きます。地図上の下側のオレンジラインが行き、上側のオレンジラインが帰りのコースですshoe市民病院から沢山池までは歩いて約30分といったところです。今回は、川などを観察しながら歩くので、沢山池まで約120分ですrun

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 こちらはスタート地点の市民病院前ですhospitalここからまずは斉田浜(せいたはま/せいたばま)へ行きますwave

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 この斉田浜ですが、人がほとんどいない穴場スポットです。岩場があり、砂浜には砂にもぐるカニが生息していますcancer砂浜をよーく見てみると、いくつもの小さな穴が開いています。これ、カニが潜り込んでいるんですね。ちょっと掘っただけでは見つけられません。30cmは掘らないと発見できません。私、以前この斉田浜の生物調査で掘ってみましたが、見つけられませんでしたdespair

 さあ、どんどん行きますよsign01

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 川に沿って歩いていきます。今年は3歳の子も参加してくれましたwink最後まで歩けるでしょうか?

 ところで、今では「川」というと、市街地では護岸整備されたものの方がよく目にするようになりましたが、こうした治水工事により整備される前は、川は人間生活にとって脅威の一つでした。大雨で増水した川が氾濫し、洪水となり、農作物への被害や人的被害もありました。洪水被害を抑えるために、昔から各地で治水工事がなされています。治水工事で有名なものとしては、今から約560年前に作られた「信玄堤」があります。甲斐(かい:今の山梨県)の国の大名である武田信玄が築いたもので、その一部はなんと今も現役で使われています。今も使われているということは、武田信玄の治水工事技術と地理的分析は現代でも通じるということですねcoldsweats02ちなみに、「信玄堤」とは江戸時代後期以降の呼び名で、史料上では「竜王川除場」と記されているようです。

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 さて、荻野川にはこのようなちょっとわくわくする橋もありますhappy01子ども達は、最初はおそるおそる、慣れると楽しそうに橋を渡ります。川の両側が何かギザギザとした護岸工事がなされていますが、これは魚など生きものの住み処に配慮した護岸手法です。橋と言えば、地名で「~橋」という、川がないのに橋の名がつく地名が日本各地にありますね?これは昔そこに川があったか、現在は暗渠(あんきょ)になっているかです。暗渠とは、今も川はあるけれど、道路の下を流れていたり、歩道上に蓋をしてしまって川を見えないようにしているものを指します。みなさんが普段何気なく通っている道、実は下に川が流れているかもしれませんよsmile

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 沢山池に到着ですdash時間は12:00頃。集合が9:30でしたので、約2時間半かけて歩いたことになります。ここで昼食を取り、午後は荻野川の生きもの観察です。ここにはヘビトンボやヨシノボリ、カワゲラなどたくさんの生きものが生息していますfish子ども達も真剣に探しますeyeいたいたsign03うわー小さいflairなにこれーsign02など、あちこちで歓声が上がりますnotes街中では中々見ることができない生きもの達に興味津々です。

 川の生きもの観察が終わり、沢山池の里山の奥をぐるっと1周し、帰路につきます。帰路では、途中の牧場に寄り、ソフトクリームをみんなで食べましたhappy02

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 この牧場のソフトクリームはかなりのボリュームですsign01そして、おいしいsign03deliciousみなさんいい笑顔ですねconfident

 市民病院前に着いたのは15:30頃。今日は約6時間かけて海から川をさかのぼり、山へと歩きましたfoot参加してくれたみなさん、ありがとうございましたhappy02

 

 続いては「カエルの産卵と野鳥観察」コースですsign01

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 沢山池の里山は木々に囲まれ、水場もあるため、生きものにとってはとても暮らしやすい環境です。この里山的環境の再生が進むにつれ、カエルなどの生きものも徐々に増えているようです。

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 まずは沢山池で野鳥の観察ですchickここ沢山池の里山では、ウグイスやヒヨドリ、コサギ、モズなどが見られます。鳥の種類としては珍しいわけではありませんが、双眼鏡や望遠鏡を通して見る鳥は、普段肉眼で見るより新鮮で迫力がありますlovely双眼鏡などで鳥を観察した経験がありますでしょうか?私、意外と難しいということを知りませんでした。目で見えている場所に双眼鏡を向けてみる。あれ?いないぞ?おかしいな、目では見えるのに双眼鏡だと見失うeyeglass子ども達は、あflairいたいた、といとも容易く見つけます。うーむ・・・これは私の空間把握能力が著しく低いせいかなwobbly

 ひとしきり見た後、今度は田んぼに向かいます。

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 この田んぼは、沢山池で開催している田んぼづくり講習会で田植えから収穫までを行っている田んぼと同じ場所です。啓蟄の頃なので、青蛙が一匹いるでしょうかsign02

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 田んぼにいたのは青蛙ではなく、オタマジャクシでしたhappy01右の写真は、このオタマジャクシが成長するとヤマアカガエルになるよ、と説明しているところです。ヤマアカガエルは国際自然保護連合によりレッドリストの軽度懸念に指定されています。レッドリストとは、絶滅が心配されている生物のリスト、と考えてください。絶滅にも段階があり、軽度懸念は段階的には最も低い分類です。ちなみに、神奈川県ではヤマアカガエルはレッドリストに載せていません。このレッドリストとは、世界全体で確定的に指定するものではなく、地域ごとに指定もします。つまり、ヤマアカガエルは世界的に見ると個体数が減ってはいるが、神奈川県内では危機的状況になるほど減っていない、ということです。同じカエルでも、地域により遺伝子が異なります。神奈川県のヤマアカガエルと、例えば京都府のヤマアカガエルでは、見た目は同じでも遺伝子が異なるそれぞれ固有の種ということになります。近年、外来生物が問題視されていますが、カエルもその外来生物の脅威にさらされていますcoldsweats02「生物多様性」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。これ、ちょっと調べてみてくださいmemo

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 次に、講師が田んぼ横にある堆肥置場のあたりを掘り始めました。ここは、沢山池の里山で木の伐採や草刈りをした際に出た端材などを置いておき、肥料などにするための場所です。こういった場所を好む生きものがいるのです。さて、何がでてくるでしょう?

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 おflair見つけたようです。何かが手のひらに乗ってますが、なんでしょう?

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 堆肥の下から出てきたのは、カブトムシの幼虫ですrockカブトムシの幼虫を見たことがありますでしょうか。成虫の茶色で硬いカブトムシからは想像ができない姿をしています。知らない人が見ると、ただのイモムシですcoldsweats01しかし子ども達、カブトムシと聞くや否や興味津々です。図鑑などで見たことはあるけれど、実物を見るのは初めてという子どももいたようです。実際触ってみます。

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 子どもも嬉々としていますが、保護者の方も興味津々bleahはじめは嫌がっていたお母さんたちも、ついつい触ってみたくなったようで、ちょんちょんと指先で触っていました。写真の右側から伸びている手は、保護者の方の手ですpaperこれで夏休みはカブトムシ探しに一緒に行けますねsmile

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 さて、今度は、里山で獲れて食べられるものを探します。

 この写真ではよくわかりませんが、講師が手にしているのは野生のクレソンですcloverファミリーレストランのハンバーグの横に付いているアレです。講師は手にしたクレソンをそのままパクッsign01と食べました。子ども達はそれを見て、うわーsign02と大騒ぎしていましたが、今みなさんが口にしている野菜などは、元々野生であったものを改良したり、食用として畑で栽培したりしているものですので、里山に自生しているものをそのまま食べても特に害があるわけではありません。クワの実を食べたりツツジの蜜を吸うなど、今の子ども達があまりそういったことをしていないんだなということがわかりますcoldsweats01

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 さて、クレソンは子ども達にとってあまりおいしいと感じるものではないと思いますので、子どもでも食べられそうなものを探します。

 ありましたflair野蒜(のびる)です。野蒜は2cm前後でにんにくのような形をしたものです。そのまま食べるとやや辛いので、講師が味噌を持ってきてくれました。味噌をつけて食べます。野生のものをそのまま食べるということに、子ども達は大興奮ですhappy01日本酒のつまみに合うんですよ、と講師が説明していましたが、果たしてその意味が理解できた子どもがいたかどうかgawk

 野蒜は古事記に応神天皇が詠んだとされるものとして、「いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに」という歌があります。応神天皇の在位は今から約1700年前の西暦300年あたりですから、かなり古くから食用として知られていたことになります。

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 最後は竹笛です。竹を切り出し、先端に節を残した状態でカットします。節がある部分とは反対側、吹く側ですね、そこを半分までいかない程度に二つに割ります。割った部分を合わせ、親指と人差し指で竹を押さえて勢いよく吹きます。指で押さえる位置を変えることで、音階が変わります。子ども達は初めはうまくいかず、しかし、慣れてくるとそこかしこから竹笛の音が響くようになりましたnotesこれ、指での押さえ方と吹く勢いが合致しないときちんと音がなりません。

 午前中だけでとてもたくさんの体験ができましたhappy01子ども達も大いに喜んでいました。参加してくれたみなさん、ありがとうございましたconfident

 

 それでは最後に「親子の自然遊び」ですtulip

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 こちらのコースは、親と子どもが自然の中で落ち葉などを発見したり、沢山池の里山で木などを活かしたアスレチック的なもので遊んだりするコースです。

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 まずは参加者を2つの班に分けます。最初の遊びは、自然散策ですmaple

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 里山の奥へみんなで進みます。これから、落ち葉での神経衰弱や、色合わせなどを・・・おっと、見てのお楽しみですねsmile

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 里山は整備された山ではありません。道らしい道はなく、川を渡ることもあります。川を渡るといっても、立派な橋があるわけではなく、写真のように木をわたしただけの橋があり、そこを渡ります。整備されていない橋は滑りやすく、とても不安定ですcoldsweats02普段みなさんが通っている道路がいかに安定・安全に配慮され、計算されて作られているかがわかります。

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 山道を登り、また下ります。山道を歩くということは、思っている以上に体力を使います。でこぼことした道を歩く際、無意識の内にバランスを取りますrunまた、しゃがんだり、倒れかかった木をまたいだりと、天然のジャングルジムを通るようなものです。枝などでケガをしないよう、注意深く観察しながら進まなければなりません。五感をフルに活用しながら歩くのです。整備された道を何も考えずに歩くのとはこんなにも違います。

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 観察場所に着きました。配られた資料を見ながら落ち葉や花、虫を探しますeye全部見つけることができたかな?happy01

 ところで、とある学習帳の表紙から昆虫が削除されたというニュースを以前見ました。理由は、昆虫が気味悪いから、ということであったかと記憶しています。それだけ子どもの身近に昆虫がいなくなってしまっていることと、自然体験をする場所がなくなってきており、普段から虫や木や川や土に触れあえる機会が減ってきているのではと思います。私はカブトムシが大好きでしたし、夏になれば佃煮にできるほどセミを取ってきては親に、こんなに取ってどうするの!と怒られたこともありましたcoldsweats01学習帳の表紙は、カブトムシや蝶々を好んで使っていました。時代とともに価値観は変化するとはいえ、自分の子どもの頃とこうも変わるものかと思ってしまいますthink

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 自然観察が終わると、次は川付近の広場に設置されたブランコなどで遊びますlovelyこれらも沢山池の里山で採取した端材などを使って作っています。ブランコは木の枝にぶらさげています。そのため、公園にあるような頑丈なものではなく、少々不安定でスリリングなものとなっていますcoldsweats01保護者の方がついてあげないと子どもだけでは少々危ないかもしれません。ですが、こうした少々危険かもと思われる遊びをすることで、子どもは安全・危険ということを学びます。危険だから遠ざける、ということももちろん必要なことですが、遠ざけてばかりいると危険かどうか判断する防衛本能が育たないとも思えます。

 日本では、古来より自然に対して畏怖の念を込めて触れあうということがなされてきました。自然とは恐ろしいものである、という認識を持った上で自然と付き合い、自然からの恩恵をいただくという付き合い方です。里山で自然に触れ合うということは、そうした古来からの感覚を蘇らせる一助になるかもしれませんconfident

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 子ども達は楽しそうに不安定な橋を渡ったり、ハンモックに乗っておおはしゃぎshineまだ水温が低い川なのに、裸足で入っている子もいますsweat01見ているこっちが風邪をひきそうですwobbly

 自然の中で遊ぶことを楽しいと感じているようで何よりですhappy01

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 木と木の間にロープを吊るしたものにぶら下がり、子ども達は大騒ぎですlovelyみんな、とても素敵な笑顔をしています。こうしたのびのびと自然の中で遊ぶことが住宅地の中ではできなくなってきています。現代では、こうした遊びを1週間に1度することは難しいので、月に1度でも自然と触れあう体験をさせることはとても有意義ではないかなと思います。

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 最後に、木で首から下げるメダルを作り、このコースは終了ですconfident木は子どもにとっては厚みがかなりあるので、ひもをとおすのも一苦労bearing何度も挑戦してやっととおりました。

 午前中いっぱいでしたが、たくさんの体験ができたと思います。参加されたみなさん、ありがとうございましたhappy01

 

 3つのコースについて紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。沢山池の里山では、春と秋に自然体験会や観察会を開催しています。次の機会にはぜひご参加くださいhappy01お待ちしておりますconfident