平成29年度 田んぼづくり講習会(第1回)
2017年5月27日(土)9:00~ 第1回 代掻き(しろかき)・畔塗り(くろぬり)
古池や 蛙飛び込む 水の音
松尾芭蕉作の大変有名な俳句です。みなさんも一度は聞いたことがある俳句ではないでしょうか?目を閉じると、池がありそこに飛び込む蛙とその飛び込んだ時に鳴るポチャッという音、が浮かんできます日本の原風景をイメージするにはピッタリな俳句です。この俳句は今から約330年前に詠まれたものですが、さて、現在蛙が飛び込む池が近くにある環境や、そもそも蛙が身近にいるという環境がどれほどあるでしょうか?俳句を聞けば頭でイメージが出来ますが、実際目にする環境というと、実はそれほど多くありません
昔はあちらこちらにいた蛙などが今は減ってきているということは、そういった生きものが生息できる場所がなくなってきてしまっているということですこの田んぼづくり講習会では、そうした生きもの達の生息できる場所、いわゆる『里山』と言われる場所、を再生させるための一環として、水辺環境を再生させるために田んぼづくりをします
つまり、色んな生きものがいた田んぼという環境を復活させて、生きもの達にもう一度戻ってきてもらおうということが目的です・・・・・ついでにお米を収穫しておいしくいただきます笑
今年も始まりました田んぼづくり講習会たくさんのご応募ありがとうございましたおかげさまで今年は20代から60代まで大変幅広くご参加いただきました。まずは沢山池の里山という場所の説明と、里山的環境の再生と活用とは何ぞやということを学びます。
こちらがお勉強の風景です。講師の話を聞き、へぇー、そうなんだ、知らなかった、といった言葉が漏れ聞こえてきますちなみに、講師は立っている人ではなく、立っている人の横に座っている青い作業服を着た人です
さて、座学の次は実地の見学です。
まずは沢山池の説明です・・・といっても樹木が生い茂りすぎて池が見えません
遠景写真です。自然豊かな場所なのは伝わると思いますが、池が写っている写真を撮るべきでした
左の写真は沢山池から奥に入っていったところにある川です右の写真はさらに奥にある湿地なのですが、水がなく一面雑草の草地状態です。沢山池の土地は水が抜けやすく、常に水を一定に保つということがとても難しい土地なのです
本日のメイン作業である田んぼに戻ってきました。今日は田んぼにとって一番重要と言っても過言ではない代掻きと畔塗りです。簡単に説明すると、代掻きの代とは泥や土のことを指します。田んぼの泥や土を掻く=田んぼの底を混ぜて泥などの塊をなくしトロトロ状態にして撹拌する、ということです。畔塗りは代掻きで撹拌した泥を畔際に塗り固めることを指します。この作業は何が重要かというと、この作業をしないと田んぼから水が抜けやすくなってしまうんですね。先ほども述べましたが、沢山池の土地は水が抜けやすい特徴があるので、水がたまりやすい状態にするために、代掻きと畔塗りはとても重要な作業であるということです。
それでははりきって作業開始です上の写真では畔付近で作業しているのが畔塗りの作業、それ以外は代掻きの作業をしています。
これが畔塗りの作業の様子です。畔近くから撮った写真がこちらです
これが畔塗りです
この代掻きと畔塗りの作業をしていると、毎年顔を出す生きものがいます。今年もきちんと出てきました
シュレーゲルアオガエルですとてもかわいい目をしています
ところで、蛙についてですが、この里山的環境の再生活動の一環として田んぼづくり講習会を始めてから生息数が格段に増えました。調査した種類はこのシュレーゲルではなく、ヤマアカガエルという種類なのですが、2012年にはほぼ0個であった卵塊(らんかい:蛙の卵のこと)が、2015年にはなんと100個以上まで回復しました両生類は他の生きものと比べ移動能力がそれほど高くないので、一度いなくなってしまったものが再び戻ってくることは大変困難なことなのです。しかし、調査の結果、沢山池にはヤマアカガエルが戻ってきているということがわかりました。今のところこの里山的環境の再生活動は順調に進んでいると言えそうです
さて、現代農業では、全ての作業を人力のみで行うということはしません。今年も文明の利器を存分に使いますそう、毎年恒例耕運機です
まずは講師が例を見せます。見ているだけだと割と簡単そうです。百聞は一見にしかず、ということで早速体験開始です
まずは、見学に来ていた講習生のお子さんが「やってみたい」と手を挙げてくれたので、その子がトップバッターです
実はやってみるとわかるのですが、これ結構力がいりますローラー部分は自動で回転しているのですが、自動で進んでくれるのかと思いきや、力を込めて押さないと進みません
では、毎年恒例耕運機ダイジェストです
人生の中で耕運機を操作することなんてあまりないと思います中々いい経験だと思います。自分が普段食べているお米はこうして作られているのかと実感できるのもいい点です
現代農法では、そのほとんどが機械で行われています。講習に参加した人もやってみると納得したようです。なぜ機械が使われるのか?それは、農家の高齢化や農業の効率化など様々な理由があります。また、国の方針として減反政策というものがあり、田んぼ自体が減っています。お米に関して言えば食料自給率は100%です。田んぼが減っているのに我々のごはんが100%まかなえるということは、田んぼが集積され、一つの田んぼ面積が広大になっているということです。もちろん、自給自足で足りる田んぼであれば手作業のところもあるでしょう。しかし、販売用のお米となると大量に収穫しなければなりません。稲は作物の中でも大変効率のいい作物なのですが、それでも機械の力に頼らないと田起こしから収穫まではできません野菜もそうですが、手づくりで無農薬のものは高価ですよね?お米も同じです。手づくりで無農薬は大変な手間暇がかかっているのです。こうしたことを実感できるのもこの講習会のいいところであると思います
みんなの力で代掻きと畔塗り完成ですこの田んぼで今年一年お米を育てていきます。さあ、今日からがスタートです