令和元年度 自然観察会「野比かがみ田谷戸自然観察会 "冬"」
2020年1月19日(日)9:00~ 野比かがみ田谷戸自然観察会 ”冬”
今回は野比かがみ田谷戸で、冬の自然観察会を開催しました
今回の観察会も前回の観察会と同じように、ビンゴゲームをとおして自然観察を行います。
案内してくださる先生は横須賀市自然・人文博物館の元館長である林先生と三浦半島昆虫研究会の辻先生のお二人です
観察会を始める前に、林先生から冬の観察会について教えてもらいました
冬に見ることができる生きものは少ないです
生きものが少ないのは、寒い冬を乗り切るためにほとんどの生きものが、安全な場所で冬眠しているためだそうです
冬眠していない生きものもいますが、じっとしてあまり動かずに過ごしているため、見つけるのは難しいです。
ですが、冬の生きものは、地面に近い位置にいることが多いので、足元を注意しながら見て進むと見つけられるそうです
今回の講習会は全体も見ながら、特に足元に集中して生きものがいないか見ながら歩きます
冬の講習会の観察ポイントを教わったら、林先生を先頭に観察会のスタートです
寒い冬の時期に花を咲かす花は少ないですが、講習会ではベニバナボロギクという花を見ました
今の時期に赤い色の花を咲かせ、咲かせた後は綿毛をつける外来の植物です
栄養のない厳しい環境でも育つのが特徴で、栄養のない土地でも1番に根つきます。
もう一つ目を引く色をしていたのは、アオキの赤い実です
この真っ赤な実をたくさんつけることで、鳥を集めます。
多くの鳥がこの赤色に集まりますが、この実は硬くておいしくないそうです。そのため、鳥は身をかじっても食べずに捨ててしまいます
アオキは捨ててもらうことを目的に、目につきやすい鮮やかな赤色の実をつけ、見た目とは裏腹に食べにくくておいしくない実をつけています。捨ててもらうと、少し離れた場所に種を運ぶことができます。さらにくちばしで実に傷がつくことで、発芽しやすくなるそうです。
冬眠している生きものも見ることができました
冬は寒いので多くの生きものが冬眠します
今回の講習会では、冬眠しているコクワガタとクロスジギンヤンマを見ることができました。
どちらの生きものも越冬中は、安全な場所で移動せず暖かくなるまで過ごします。動かないだけでなく呼吸もとっても浅くなります
安全な場所は生きものによって違っていて、コクワガタは朽ちた幹の中にできた隙間で、クロスジギンヤンマはため池の中です。
観察のために今回は特別に見せてもらいましたが、観察した後は、無事に冬を越えられるように元通りに戻しておきます
冬の越し方は冬眠のほかにも「卵のままで越す」方法と「寒い時期だけ成体でいる」という方法があります。
卵のまま過ごす方法で冬を越す生きものはアマガエルです。沢山池の里山のため池にはアカガエルの卵がありました。アカガエルは今の寒い時期になると、大人のアカガエルが山から下りてきて、ため池などの水辺に卵を産みます。卵を産んだアカガエルはまた山に戻って冬眠し、子どもは冬の間は卵のまま過ごします。
寒い時期だけ成体でいる生きものは、寒さに強い体のつくりをしています。代わりに暑さに弱くなるので、冬の間だけしか生きられなくなりますが、周りに生き物が少ない時期なので天敵に襲われる心配が少ないそうです。
ところで、動物と違い自分で動けない植物ですが、冬を越える方法はいくつかあります。
その中の1つが、葉の出し方を変えることで冬を越す方法です。
代表的なのはタンポポやオオバコなどのキク科の植物で、ロゼット状になるように葉を出します。
ロゼット状とは、大きめな葉を根元の低い位置につけ、葉同士が重ならないようにして地面に広がる様子です。
ロゼット状にすることによって、日照時間の少ない冬でも、太陽の光をたくさん集められるようにしています。
逆に、暑い時期は葉から植物内の水分を蒸発させすぎないように、地面に葉を広げず、茎部分全体に葉をつけます。小さな葉を地面から離れた位置から出して影を作り、下にある葉を守っているそうです。
樹木の幹にはウメノキゴケというコケがついていました。梅の木と安山岩によくつく種類のコケです。
このコケが発生するのは、空気のきれいな証拠だそうです。
最後にカワニナの紹介がありました
カワニナは淡水にいる細長い巻貝で、ゲンジボタルやヘイケボタルのエサになります。
カワニナは冬でもエサを求めて河川の中を這い回っています。掘られて黒い線になっているところが、カワニナの通った跡です。
野比かがみ田にいるカワニナは貝の先が尖っています。この尖っているのは、栄養のあるエサをしっかりと食べている証拠だそうです
エサが不足しカルシウムが足りないと、貝のてっぺんが尖らずに緩やかなカーブになるそうです。尖らないのは、貝の先を溶かしてカルシウムを再吸収しているそうです。
野比では貝の先が尖っていない個体は見かけないので、河川の環境が豊かなことがわかります
ちなみに、カワニナはホタルの幼虫のエサになります。
野比かがみ田谷戸では、今年もたくさんのカワニナが確認できたので、5月下旬にはホタルが見られそうです
日が当たる場所に移動して、観察会の中で見たことや聞いたことを振り返りながら、ビンゴゲームの答え合わせです
全員がビンゴすることができました
以上で秋の自然観察会は終了です