令和元年度 里山ボランティア育成講習会(第3回)
梅雨に入り小雨がぱらつく中での実施となった第3回里山ボランティア育成講習会
今回は「草取り」を行います
前回の講習から3週間が空いてしまい(15日の講習会が雨天延期になったため)、開けていた田んぼが一面雑草まみれになっていました。
おいしいお米をたくさん作るためにも、一見して地味な草取り作業もしっかり行っていきましょう
ところで、水田に生える雑草とはどんな植物なんでしょうか
もっとも代表的なものが「ヒエ」の仲間です。形態や生育時期等がイネに酷似しているのですが、このように作物に伴って成長する雑草を随伴雑草といいます。よく似ているので除草されづらく、穂がついてようやく見分けがつくほどです。実はよくよく見てみると、イネには葉の付け根の部分に葉耳という毛が生えています。ヒエにはこれがありません。またイネにはこの付け根に葉舌という膜状の突起があり、これもヒエにはありません。
なかなかイネとの判別の難しいヒエですが、放置するとイネの生育に様々な問題が起こってしまいます
まず、ヒエがイネの生育を妨げる問題があります。ヒエの生育はイネよりも早く、田植えから約60日後にはイネと同じ高さまで成長し、約120日後にはイネを追い越して日照を奪ってしまいます。
また、コメの品質を落とす要因を作ってしまう問題もあります。ヒエはイネより早く出穂するため、それにつられてカメムシ類の虫が早い時期から現れます。特にアカスジカスミカメなどのカメムシ類はイネの穂を吸汁して玄米に斑紋を残します。これが斑点米というコメを作り出してしまうことに繋がるのです
これだけの弊害があると、地味な草取り作業もイネの生育においては大事な作業だということがお分かりいただけたのではないでしょうか
水田に生える雑草はほかにも、コナギ、イヌホタルイ、アシカキ等々たくさんの種類があります。
お料理で使われることもあるセリも、こと水田においては雑草です。狙った植物以外はイネの生育を妨げるお邪魔虫なんですね
さて、実際に鎌を持って草取りを行いましょう
とその前に、まずは鎌のは刃を砥石で研ぎます。水に浸け、抵抗を減らした砥石で刃を研いでいきます。砥石は二層に分かれており、粗い面である程度研いだのち、細かい面で仕上げを行います。研いでいると砥石が削れて刃についた水滴が灰色に濁っていくのですが、これをそのままにして研ぐと、砥石の粒子のおかげでより鋭く研げるのだそうです。
よく研がれた鎌は切れ味が鋭く、ノコギリのようにギコギコと切らずとも手首のスナップを使って振るだけでサクサク雑草を刈ることができます。雑草の中には太くしっかりとした茎をもつものもありますが、そんな雑草も軽々と切ることができます。
鎌が研げたら今度こそ草取り開始です
実際の農家さんは収穫までの間、何度もこの草取り作業を行っています。広範囲を長時間かけて行う作業であるため、最初から力任せに鎌を振り回していてはすぐに疲れてしまいますねつまり、いかに体力を温存しつつ、効率よく作業するかが大事になってくるのです
例えば鎌の振り方。リーチいっぱいに大振りで横に薙ぎ払うよりも、軽く腕を曲げ手前に引くように刈り払ったほうが疲れないんだとか。実際にやってみると違いは一目瞭然で、大振りではすぐ息が上がってしまいました。
また、気温の高くなるお昼以降の時間帯は避け、気温の比較的低い午前中に作業してしまうことが多いそう。作業中は汗もかきますし、ばててしまわないようにこまめな休憩も欠かせません。
農作業は体が資本。体調への配慮はおいしいお米作りの一端を担っているのです
わさわさと生えた雑草をてきぱきと刈っていく講習生の皆さん。
作業の途中ですが、朝方からの小雨が一転して土砂降りに変わってしまいました
一旦木陰へ避難し作業を中断します。
強い雨だったため途中での中止も危ぶまれましたが、なんとか雨が弱まったため作業を再開。
続いては水田内の除草。こちらでは鎌のほかに刈払機も使用します。
水田に雑草を発生させないようにするためには、田んぼの水もちが大きく関わってきます。代掻きが十分でなかったりすると水が地中へとしみ込んでしまい水漏れの原因となってしまいます。代掻きは大事な作業だと第1回の記事でも書きましたが、こういったところにも影響が出てきてしまうんですね。
水田に十分に水が満ちている場合、雑草は芽を出しづらく繁茂を抑えることができます。逆に水管理を怠り田んぼに十分な水を張らなかったり、田んぼ内の水位に高低差があると侵入する雑草の種類や量が増え、除草の手間も増えてしまいます
今回、使用している田んぼも上三枚は水もちがよくほとんど雑草が生えていなかったのに対して、下三枚は水が全く張っていない状態だったため雑草が生え放題になっている状態でした。
水田内の除草はイネを避けながら刈るほか、雑草を水の中へ沈めてしまう方法があります。水中に押し込んでしまえばいくら生命力の強い雑草でもイチコロです。しかし、それでも狭い場所での作業は大変なものです。そこで刈払機が登場します。
刈払機ではイネとイネの間の水面擦れ擦れを刈っていくのですが、本体の重さと足場の悪さも相まってなかなか加減が難しいです。
講習生の皆さんも微妙な力加減に四苦八苦の様子。
皆さんの除草で最初から比べると水田内がだいぶすっきりしました。これにて本日の講習会はおしまいです。お疲れ様でした
しかし、まだまだ雑草の生命力は侮れません。定期的に草取りを行いおいしいお米を目指しましょう
次回は樹林地管理に関する講習会なのでお楽しみに