令和元年度 自然観察会「野比かがみ田谷戸自然観察会 "夏"」
2019年5月26日(日)13:00~ 野比かがみ田谷戸自然観察会 ”夏”
今回は野比かがみ田谷戸の里山で、自然観察会を開催しました
野比かがみ田谷戸の里山は、平成27年度から環境整備を進めていた場所で、自然観察会として公開するのは初です
自然観察の場となる野比かがみ田谷戸には、環境フィールドでは見かけることが減った田んぼもあります
田んぼがあることによって、田んぼに住む生きものが集まるだけでなく、その生きものをエサにする生きものたちも集まり、豊かな生物多様性がつくられています
今年度の自然観察会は1年をとおして、全4回で予定しています
違う季節に同じ場所で自然観察会を行うことによって、野比かがみ田谷戸の「生物暦(せいぶつごよみ)」を学ぶことができます
「生物暦」とは、1年の中で生きものたちが、季節に合わせてどのように移り変わっている様子か表す言葉です
生きものたちも四季に合わせて移り変わっていきます
第1回目の観察会では夏の自然を学びます
先生は横須賀市自然・人文博物館元館長の林先生と、里山の再生や環境調査を行うNPO法人三浦半島生物多様性保全の天白先生のお2人です。
ビンゴゲームはかがみ田の中で見つけられるものが題材につくられていて、先生の案内でコースを歩きながらビンゴを目指して枠を埋めていきます
もちろんビンゴしたら景品があります
出発前に林先生から、野比地域や自然観察についてのお話がありました
先生によると、生物多様性を豊かにするには、生きものの種類をたくさん集めるだけでつくれるものではないそうです
生物多様性を豊かにするには、その地域ごとに持続的な環境をつくらなくてはならないそうです。ここでいう持続的な環境とは、生きものたち同士の共生や食物連鎖が完成している環境のことです。なので、遠い場所から運んできた植物を植えたり、生きものを放したりするだけでは、それらの動植物を保つために人が常にエサなどを供給し続ける必要があり、持続的な環境とは言えないそうです
生きものや植物、土地のすべてのバランスが重要ということですね
少し難しいですが、自然を学ぶ上で大切なことだそうです
自然を観察する上で大切なのは、見つけたものや気になったものをスケッチやメモして記録することです。自分自身で感じたことを振り返りながら観察することで季節を感じることができます
ビンゴゲームの説明や自然観察を行う上でのコツを聞いて、準備ができたら早速出発です
歩き始めてまず見つけたのはヘビイチゴです。葉の上に真っ赤な実ができますが、残念ながら甘みがなくおいしくないです。名前の由来はヘビのいそうな場所に生えるからだそうで、ヘビが食べるわけではないそうです
田んぼの上にはトンボが飛んでいました。青色の田んぼはオスのオオシオカラトンボで黄色いトンボはメスのオオシオカラトンボです。オスメスで色が違い、メスは体の色から麦わらトンボと呼ばれているそうです
トンボの特徴的な4枚の羽の根元にはそれぞれ発達した筋肉がついていて、4枚ともバラバラに動かして、飛び方を調整しているそうです
羽の動かし方は早すぎて人の目では見えませんが、スローカメラで撮影して見ると、前の羽2枚を上下に動かしているときは後ろの2枚の羽は止めて、前の羽と後ろの羽を交互に動かしているそうです。片方の羽の動きを止めることで、体が浮き上がりすぎるのを防ぎ、まっすぐに進んでいくことがでるようになっています。
のんびりと飛んでいるように見えますが、器用に羽を動かして高速で動作を繰り返しているのですね
この時期の田んぼには、水たまりがところどころにできていて、チョウが集まっていました。チョウは花の近くを飛んでいるイメージがあるので、すごく不思議な光景に見えます。
ですが、先生によると暑いとチョウは水の近くに集まるそうです
なぜ水に集まるかと言うと、チョウは体温調節が苦手で、水を飲んで出してを繰り返し体を冷やして暑さを乗り切るそうです。今回の観察会で水を飲んでいたチョウは2種類いました。羽の表がオレンジ色で体の小さいテングチョウと、青色と黒色の模様の羽を持つアオスジアゲハです
ほかにも水辺には、白い泡状のシュレーゲルアオガエルの卵がありました
このカエルは名前にシュレーゲルとついていますが、新種として発表したのがオランダのシュレーゲルさんだったためシュレーゲルアオガエルとつけられただけで、日本在来のカエルです
シュレーゲルアオガエルは、体の色が日本の在来種に多い茶色系ではなく、明るい黄緑色をしています。このカエルはメスが大きくオスはメスより一回り小さいです。
木のそばにはタイワンリス捕獲用のわながあります。タイワンリスは、市内どこでも見ることができる特定外来生物です。家庭菜園や作物や電線をかじるなどの被害が発生しています。
また、木の根元にアライグマ捕獲用のわなもありました。アライグマもタイワンリスと同じく特定外来生物です。かがみ田では、田んぼや湿地にいる生きものを食べてしまうなどの被害が発生しています
水の中にはコオイムシがいました。黒っぽい楕円の水生生物で、住める環境が限られるため、あまり見かけない珍しい種だそうです
ほかにもオタマジャクシを見ることができました。今の時期のオタマジャクシは、足が生えエラ呼吸だけでなく肺呼吸も両方行っています。今生活している水の中から、カエルとして外に出る準備の時期なんだそうです
鳥の紹介も先生からありました。ウグイスは若いうちはうまく鳴けなくても周りのウグイスの声を聴き練習を重ねることでうまく鳴けるようになっていくそうです。実際によく耳を澄ませて聞き比べてみると、個体によって鳴き方に特徴があり面白いです
木陰には白い花びらのハルジオンがたくさん咲いていました。キク科で細い糸状の花びらがたくさんついているのが特徴です。どこにでも生えるので貧乏草とも呼ばれています
河川横の斜面から生えているヤブニッケイは葉に強い香りがあり、大きい葉ほど強く香るそうです
最後にビンゴゲームの答え合わせと、観察で見たものの振り返りを行って夏の自然観察会は終了です
9月の観察会もぜひ参加して、夏との違いを観察してみてください