令和元年度 里山ボランティア育成講習会(第1回)
2019年5月18日(土) 9:00~12:30 第1回 講座・代掻き・黒塗り
令和初のボランティア育成講習会がスタートしました!
今年度も新たな講習生を迎え、里山的環境を支えるボランティアを育て上げるべく、長坂は沢山池の里山にて講習会を開催していきます。
新年度の初回ということで、最初にこの講習会の目的をおさらいをしましょう前年度以前の記事でも説明しておりますが、少々お付き合いください。
横須賀市では「里山的環境保全・活用事業」を行っています。ちょっと小難しいですね。
里山とは昔から人が生活のために利用してきた山や森林を指します。
ネコのバスが出てくる某アニメで主人公が引っ越してきたあのシーンや、日本昔ばなしのおじいさんおばあさんが住んでいる場所のような風景がイメージしやすいかもしれません。
元々の森林を切り開いて薪などに用いられる樹木を植えたり、田畑を起こして農作物を栽培したり、里山の形成において人の手が加わることは必要不可欠です。
整備された里山には様々な生き物や植物が生息し、人々と共生します。
しかしながら、住宅地の開発などが進み、今ではこうした風景が失われている地域もあります。
里山のようにヒトと自然が共生する風景は守り、未来へ残していく必要があるとは思いませんか?
とはいえ、便利なこの世の中、昔のような里山を復活させても今からそこに移り住む人はそう多くはないと思います。
そこで里山”的”環境、かつての里山のように様々な動植物が生息する自然環境を再生・保全しよう!というのがこの事業の目指すところであり、この事業に興味を持って頂き、一緒に里山的環境を作り守る方を増やしていくことがこのボランティア育成講習会の目的なのです
そのためにも講習生の皆さんには座学だけでなく、実際にカラダを動かし、自分で里山環境を作る・整備していく楽しさを余すことなく感じていただきます
と、ここまで偉そうに書きましたが、なにを隠そう実は筆者は田んぼ初体験。クワの持ち方すらままならないド素人です。この体たらくでは皆さんにこの講習会の様子をお伝え出来ないのではないかという一抹の不安が…。ということで、筆者も一番の初心者枠として講習会に参加させていただきました。
まずは皆さんで自己紹介。一人一人お名前と座右の銘をおっしゃっていただきました
ちなみに私の座右の銘は「ローマは一日にして成らず」。毎日の積み重ねなくして大きな成果は生まれないという意味のことわざです。かの有名な小説「ドン・キホーテ」の一説が元になっているとか、ヨーロッパの古いことわざであるとかその由来には諸説あります。
里山的環境も一日にして成らず。まさしく今日、私たちはローマへの大きな一歩を踏み出したのです。…言い過ぎたかもしれません
さて、講習を始めましょう
初めに講師による今回の講習の説明です。皆さん真剣に講師のお話に耳を傾けていますね。
この日行うのは「代掻き(しろかき)」と「黒塗り」。どちらも稲作のベースとなる田んぼを作る作業です。
「黒塗り」は「畔塗り(あぜぬり)」などとも呼ばれますが、この記事では黒塗りと呼ぶことにします。
突然ですが、皆さんは稲作で重要な作業といえばどんなものが想像されるでしょうか?
初心者の私などは定期的な水の管理や、稲の収穫からの作業なんかを思い浮かべました。田んぼに携わらない方だとこんな風に考える方が多いのではないでしょうか。
実は実際の稲作では「水田にイネを植えるまでが勝負」と言われるほど田植えまでの作業が大事なのだそうです。田んぼ自体のコンディションがイネの出来不出来に大きく関わってきます。
つまり「代掻き」や「黒塗り」といった作業は、その1年の田んぼの命運を分ける作業といっても過言ではないんですね。
開始数時間でさっそく田んぼの命運を握ってしまいました。責任を感じつつ実際の田んぼでの作業に移りましょう。
ここからは講習修了生の横須賀里山田んぼ倶楽部(通称さとたん)の皆さんにもお手伝いいただきます
最初に行うのは「代掻き」。田んぼに水を入れた状態で土の塊を細かく砕き、均一にならす作業です。
土を細かく砕くことで締まった土ができ地下への漏水を防いだり、雑草の種子を土中に押し込めることでその発生を抑えます。
また、土をならすことは苗を植える際に水が浸らなかったり、逆に水に頭まで浸かってしまうような状態を防ぎます。
講習生は足袋を履いて田んぼに入ります。普段の生活では感じることのないドロドロでズブズブな足場に悪戦苦闘の皆さん
土を砕く作業にはクワやスコップを用いたほか、大きな耕運機も登場。講習生全員が実際に耕運機を動かしてみました
パワフルに土を砕いてくれる反面、耕運機自体が重いので制御が難しく、特に折り返しが難しいと講習生の皆さんが仰っていました。
土をならす作業はトンボで行います。丁度土が水面に隠れるような、ひたひた状態を目指しならしていきます。
プロ顔負けのトンボ捌きをみせるさとたんの先輩の方々。講習生もそれに倣い、綺麗にならしていきます。
作業中はこまめに水分補給や小休憩をはさみ、熱中症に気を付けます
この日は快晴で日差しもあり作業を続けると汗ばんでしまう陽気でしたが、田んぼに入っていると足がひんやりして気持ちが良いという発見もありました
続いての作業は「黒塗り」です。代掻きでトロトロになった土を谷側のあぜにコーティングすることで、水が流れ出てしまうのを防ぎます。
やたらと漏水に対してなんだか敏感な気がしますが、これには沢山池の田んぼが「谷戸田」であることが関係しています。
「谷戸」とは山間での浸食により形成された谷状地形のことで、「谷戸田」とはこの谷戸で拓かれた田んぼのことを指します。山間にある谷戸田は傾斜地であることが多いため、田んぼの水が下へ下へと流れ出てしまうのです。黒塗りはこうした漏水を防ぐ重要な作業なんですね
田んぼづくりではちょっと面倒な谷戸田ですが、生物多様性の大切さが見直された今、その豊かな自然環境に注目が集まっています。
田んぼがあればカエルなどの生き物も集まり、それをエサとする鳥類も現れます。都市化などで失われたこうした環境に生息していた動植物の中には、絶滅が危ぶまれる種もおり、それらの再生に谷戸田はうってつけなのです。またまた責任重大になってきましたね
肝心の黒塗り作業ですが、代掻きでトロトロになった土をクワやスコップであぜに積んでいきます。積んでは締め積んでは締めを繰り返し、水面から5cm程度の高さで水を通さない泥のバリケードの完成です
以上で本日の講習会は終了です。皆さんお疲れ様でした
さとたんの方々は午後も作業をされ、そこに混ざって作業された講習生の方もいらっしゃいました。
筆者は翌日腰がバッキバキになりました。まだまだ一人前には程遠いですね…
次回の講習会ではこの田んぼに田植えをするのでお楽しみに