平成28年度 田んぼづくり講習会(第1回)
2016年5月28日(土)9:00~ 第1回 代掻き(しろかき)、畔塗り(くろぬり)
1970年前後、日本は田んぼを減らす方針を決めました。いわゆる減反政策です戦後、お米の消費量は1962年をピークに下がり、日本の食卓は洋風化が進みました田んぼを減らすということは、農家の方にも大きな影響を与えましたが、そこを住処としていた生きものたちにも多大なる影響を与えました。田んぼ環境を住処にしていた生きものたちは徐々にその姿を消していきました。
この田んぼづくり講習会は、『里山』と言われる、人と自然が共生する環境を復活させ、日本の原風景をもう一度再生させる一環として行っています
今日は田んぼづくり講習会第1回です今年も20代から70代と幅広い年齢層の方々が参加してくれました
田んぼづくり講習会開始の様子です。参加者多数に見えますが、平成26年度、27年度の講習修了生も応援に来ています。さて、まずは今年の講習生に、ここ沢山池について探索しながら説明していきます。
参加される方の多くが、横須賀にこんなにたくさんの自然が残っているところがあったのと驚かれます。いやいやみなさん、これからこの自然を守る一員となるための講習会です笑
沢山池では「田んぼづくり講習会」とは別に、「里山林手入れ講習会」という講習も行っています。沢山池の里山の自然の話をこちらですると、あちらの講習会用での記事ネタがなくなるので、このあたりでとどめておきます
では、田んぼづくりの様子を見ていきましょう
本日の作業は「代掻き」と「畔塗り」です。あまりなじみがない言葉ですね。簡単に言葉の意味を説明しましょう
まずは「代掻き(しろかき)」。「代(しろ)」とは「泥や土」を表す言葉のようです。代を掻く、つまり、水田の泥(土に水を入れた状態)を混ぜるということです。土の塊をなくし、田んぼをやわらかい泥状態にします。こうすることで、田植えをしやすくするのです。この代掻きは一度ではなく何度か繰り返し行います。農家によっては2月くらいから始めるそうです。上の右の写真が代掻きの説明中です。
次に「畔塗り(くろぬり)」。「あぜぬり」とも読みます。「畔(あぜ)」とは、田んぼと田んぼの間に設ける区切りのための細い通路のことです。沢山池の里山では、田んぼは一枚しかありませんので田んぼを区切っているわけではありませんが、上の写真の講習生が立っているあたりを畔と呼びます。畔塗りとは、田んぼから水が抜けてしまうのを防止するために作る防波堤のようなものです。田んぼの土を田んぼの淵に塗り固めていきます。上の左の写真がその様子です。この畔塗りがしっかりできていないと、田んぼで最も重要な水の管理ができません。水がどんどん抜けてしまうんですね
では、みんなで作業開始です
最初に田んぼと畔の境目を踏み、そのあとに鍬(くわ)を使って畔塗りをします。初めての作業で戸惑っているようですねこれでいいのかな??間違ってないのかな?と胸中穏やかではないようですが、正解というものはありません強いて正解があるとすれば、水が抜けないこと、これだけです。そして、里山的環境の再生活動の一環ですから、将来、カエルやイモリなどが増えれば正解だったということになります。境目を踏んでいると…出てきました
シュレーゲルアオガエルです泥がついててわかりづらいのでもう一枚。
おなかが大きくなっています。メスのようです。これから卵を産むんですね。こういう生きものたちがたくさん生息する場にしていく、これがこの田んぼづくり講習会の目的ですあっ、もちろん収穫量も大事なことですよ
さて、次に代掻きですが、トンボやレーキという道具を使って泥を混ぜていきます。
水と土を混ぜてやわらかい泥にする、と言葉にすると簡単ですが、手作業でやるとかなりの重労働です。とにかく重いんですよ…というわけで、使いましょう文明の利器
さすが機械泥の重さをものともせず撹拌してくれます。現代の農家さんはほとんどがこうした機械を使用しています。農林水産省の平成28年6月1日時点のデータでは、農家の平均年齢は67歳、農業就業者のうち65%は65歳以上です。農具の機械化は高齢化が進行している日本の農家にとって大変助かっていることでしょう。ん?機械を使うことと里山の環境を再生することに何か矛盾を感じる、と?確かに里山を含む自然保護活動というと機械を使わず、人の手でなるべく環境負荷を与えないように、というイメージがあるかもしれませんが、実はそんなことはありませんその話はこの全6回の記事の中でおいおい話していきましょう。
さて、代掻きは写真だとちょっとわかりづらいので、畔塗りのBEFORE/AFTER写真を載せます。
ここを…
このように仕上げるんですね
最後は川で道具などを洗い、本日の作業は終了です。みなさまお疲れ様でした
そうそう。シュレーゲルアオガエルのほかにヤマアカガエルもいましたので写真だけ